「あしたの授業は自習にします」とネコ先生は云いました。「わからないことをみつけて,ずっと考えてください」。
quote:南極隕石探査プログラムが南極点から約750kmで発見した隕石は,火星起源のものであると米航空宇宙局(NASA)が発表した。この隕石は約1100万年前,火星に小惑星が衝突した際に火星表面から吹き飛ばされたものが,宇宙を駆け抜けて南極大陸に落下したとみられる。
「この世界でわかることとわからないことの数は,どっちが多いと思う?」「??? わかることの方が多いんぢゃないですか? わかってるんだし。て云うか,わからないことはわからないから数えられないんぢゃ? なに云ってるのかわからなくなってきました」「そうね。それが正解。わからないことの数はわからない。でも,そのわからないってこともわからないことの数に入るのよ」「??? …わからないことの数も多そうですね」「そう。これはその人の生き方が表れる質問なのかもしれない。わかることが多いと云う人は,なにがあっても気にしないで生きていける。わからないことが多いと云う人は,とりあえずなんでも忘れて生きていける人かな」「なんですかそれ?」「世の中の人は,だいたいそのどっちかで生き続けているものよ。ネコ先生はよくそう云ってるわ」。
「火星に小惑星がぶつかって,その爆片が地球の南極に落っこちたってことですか?」「そう云ってるわね。普通に考えたらありえないことだけど」「ありえない?」「ありえると思う?」「あってもおかしくないんぢゃ?」「火星から吹き飛んで宇宙空間にさまよっていたものが地球に落下するなんて,あなたが投げたボールが地球を一周してあなたの後頭部に当たるようなものだわ。ありえないと考えるのが普通ね」「そう云えば,宇宙でなくしたコンパスを後日みつけるっていうマンガがあったけど…」「ありえないわね,そんなことは。でもね。世の中はそんな起こるはずもないことが起こるものなのよ。おおむね,わかることは起こらない,わからないことは起こる。だからきょうの次には必ずあしたが来るの。わかるわね?」「??? …わからないんですけど」「それでいいのよ。そのわからないことを考えるために,あしたは来るんだから。ネコ先生はいつもそう云ってるわ」。
|